空港での手続きの際に何度も「旦那さま」と空港スタッフに言われた会話が続きました。
マイノリティの生きにくさは、ちょっとした一言の積み重ねなんだな…と感じたお話です。
2017年にあった出来事になります。
わたしは2016年6月にカナダ人の女性と国際同性婚をしています。
スポンサーリンク
空港でスーツケースの配送ミスがわかる
こんな会話をしながら、同性パートナーのキムと、カナダから日本へ一時帰国した時の出来事です。
羽田空港に到着すると、わたしとキムは別々のレーンに並びます。
キムはカナダ人であり日本の永住権は持っていないので「外国人」の列に、
わたしは日本のパスポートを所有しているので「日本人」の列です。
日本では同性婚ができないので、キムが配偶者扱いになることがないからです。
「日本人」の列はガラガラに空いていて、「外国人」の列は様々な国から来た人で長蛇の列ができていたんですよ。
そう思いながら、先に日本に入国したわたしは、預けていたスーツケースを探しにいきました。
荷物受け取りレーンに行ってみると、数名の乗客の名前が書かれた貼り紙を見つけたんですよね。
よくよく目を凝らして見てみると、キムの名前が書かれていました。
「パートナー」と言ってるのに「旦那」と言い直される
じっと貼り紙を見つめていると、空港スタッフに話しかけられました。
パートナーという響きに慣れていないのか、なんだか理解されていない雰囲気が漂い、すでに嫌な予感しかない…
どうやら、スーツケースが北京から日本にうまく配送されなかったようなんです。
紙に名前が書かれている乗客7人のスーツケースはまだ北京にあるそう。
まぁ、こんな会話が繰り広げられました。
「パートナー」とハッキリと何度も伝えても、「旦那」とわざわざ言い換えられる始末…。
悪気はない小さな差別のことを「マイクロアグレッション」と言います。
これはLGBTQ+当事者が日常的に受ける差別の一種でなんです。
きっとマジョリティ(大多数)側だったら「旦那」と言われても違和感はないですよね。
でもマイノリティにとっての生きにくさは、そういう何気ない一言の積み重ねなのだと感じました。
「パートナーと呼んでいただけますか?」このたったの一言がいつも言えない。
理由は簡単です。
怖いから。
こんなにブログを通して大々的にカミングアウトを済ませてもなお、怖いんです。
差別されるのが?白い目で見られるのが?よくわからないけど、複雑な気持ちになります。
事実としてはLGBTQ+はまだ笑われる対象であり、イジメの対象だということ。
「また説明しなきゃいけないのか」という気持ちも多少なりともあったと思う。
キリのないカミングアウトをいつまで続けなきゃいけないんだろう。
あと、見ず知らずの人にいきなりカミングアウトする勇気はなかったんですよね…。
わたしはラッキーなことに家族からも周りの友人からも理解されています。
しかし、異性愛を前提とした言葉は社会のあらゆる場面で投げかけられています。
そのたびに「理解されない存在なんだな」と思っているLGBTQ+当事者はたくさんいるはず。
配送の手続きでも「旦那さま」と言われ続ける
しばらくすると、別の空港スタッフが戻ってきてこう言いました。
受け付けはこんな感じ。
渡された書類に名前や住所を書いていきます。
それから、どんなスーツケースなのか聞かれ、空港スタッフが記入していきました。(色やサイズなど)
パスポートのコピーも預けました。
パートナーってこんなにも言ってるのに、「旦那」と直される。
もはや途中から笑えてくるレベルですよ…。
パートナーのキムが入国審査を終えて到着!
そうこう手続きをしていると、入国審査を終えたキムがやってきました。
空港スタッフは、キムを見るやいなやハッとした顔をしていました。やっと女性のパートナーと気づいた様子でしたね。
とりあえず、荷物は2日後の朝に実家に配送してくれることになりました。
同性婚ができない日本で、代筆が断られるケースもあるのでは?
私は、キムの家族として代筆を行なうことができました。
それはスタッフがずっとパートナーが異性であると思い込んでいたからでしょう。
(そして特に証明確認もなかったし)
しかし、日本では同性婚ができないですよね。(結婚の自由をすべての人に訴訟は継続中)
カナダでは、私たちは既婚者として法的に扱われますが、私の日本の戸籍は「独身」のままです。
ずっと私の配偶者は男性だろうと勘違いをしていた空港スタッフは、女性であるキムを見て、どう思ったのかはわかりません。
今回はたまたま代筆ができたけれど、同性婚ができない日本ではこういった場面で、同性パートナーだと代筆を断られるケースもあります。
結婚という道が閉ざされていることで、制度上の差別を受けることがあるのです。
<下に続く>
異性愛が前提の社会を変えたい
キムは「なぜ日本に来たのか?」という質問に対して、未だに「観光」と答えなければいけない現状もあります。
同性婚ができない日本では、「妻の家族に会いに来ました」が通じないのです。
空港という国際的な場所で働くなら、せめてグローバルな視点で人に接してほしいなと思いました。
今回、私は、「パートナーと言っていただけますか?」のひと言が言えませんでした。
こんな出来事があるたびに、次回こそは言うぞ!と思うのですが。
カミングアウトって未だにむずかしい。
ちなみに「奥さん・奥さま」という言葉も、女性は家の「奥」という意味合いがあるので、使うのをオススメできません。
さらに「旦那」はお金を与えるダーナが語源であり、「主人」は主従関係を示す言葉になるので、こちらもあまりオススメできません。
そう考えると、「夫さん・妻さん」を個人的には使いたいなと思いますが、それだと異性カップル限定の言葉になってしまう時があります。
同性であっても、異性であっても、「パートナー」と呼ぶのが浸透していってほしい〜。
ヨスさんの配偶者の呼び方についての記事がとても勉強になります。ぜひ、こちらも読んでみてくださいね。
「主人」っていう夫の呼び方にずっとモヤモヤ感がある。だってこの言葉…
「嫁」って言葉がクソ嫌いで天地がひっくり返っても使わない理由
以上、まどぅー(➠プロフィールはこちら)でした。