先日、手相を見てもらってきました。
(これといって何かに悩んでいるわけでもないんですが、良いことだけは信じるタイプ)
手相を見てもらうこと自体は面白かったのですが、
それが「夫がいる」と思い込まれてしまうことです。
これはLGBTQ+当事者がよく受けるマイクロアグレッションのひとつです。
今回は、「トランスジェンダーへのマイクロアグレッション」も見受けられたので、その時の気持ちを書き残しておこうと思いました。
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わたしに「夫」はいない
手相を見てもらっている間はずっと、「夫がいる」という前提で話しかけられるんです。
カミングアウトをするとよく「わざわざ公表することではない」と言われますが、黙っていれば異性愛者だと思われてしまうんですよね。
たとえば、結婚線や運命線を見ている時に、こんなふうに言われます。
- 「○歳で旦那さんと出会って結婚していますね」
- 「今の旦那さんと生涯を共にしますよ」
- 「爪の白い斑点は旦那さんがあなたを想っている証だね」
「パートナーが同性である」という前提が頭の中に全くないのだと思います。
同性愛は長年、社会で笑いのネタとして消費されてきました。
「気持ち悪い」と思われたらどうしよう。
カミングアウトするか迷っている間にタイミングを失い、異性愛前提でどんどん会話が進んでいってしまいました。
6年前の2017年にも、似たような体験を記事に書きました▼
6年前に比べてLGBTQ+という言葉を知る人も増えたと思うのですが、それでもマイクロアグレッションはまだ日常的にあるのが現実です。
マイクロアグレッションとは、明らかに「差別だ!」とは判断しにくいものでありながら、相手を傷つけてしまう可能性を含んでいる差別の一種です。
ありとあらゆる場面で異性愛を前提とした会話があるので、「仕方ない」「よくあることだから…」とやり過ごす当事者の方も多いです。
ひとつひとつは小さな出来事かもしれないけど、その積み重ねが気づいたら大きな傷になってしまっていることも。
わたしは、2013年に初めてカミングアウトをしました。
10年経った現在(2023年)もなお、新しい人に出会うたびにカミングアウトし続けています。
カミングアウトは「したいからする」のではなく、ほとんどの場合「せざるを得ないからする」のです。もちろん一生カミングアウトをしない人もいます。
どちらを選択にするにせよ、わたしたちは確かに社会に存在する。
想定されない社会で生きにくさを感じている人がいることは知っておいてほしいのです。
<下につづく>
わたしの性別と性的指向
夫がいると嘘をつくこともできたわけですが、意を決して同性のパートナーがいることを手相占い師に伝えました。
「あ〜なるほど。レズビアンってやつですね」と言われました。
わたしは女性でありノンバイナリーであり、パンセクシャルなんですが、
同性のパートナーがいることを伝えたところで全神経が疲労してしまい、さらなるカミングアウトをする余力がもう残っていませんでした。
初対面でノンバイナリーやパンセクシャルだとカミングアウトされたところで、すぐに理解されることもないだろうと諦めもありましたが。
(わたし自身も、自分を理解し受け入れるのに時間がかかったのも事実なので)
しかし一方で、性別の決めつけはミスジェンダリングになるし、性的指向の決めつけは誤った認識や偏見を生むことにも繋がる可能性があるんですよね…。
そして、手相では当たらないこともあるんだな〜と、妙に腑に落ちてしまった。手相で恋人やパートナーの性別がわかる人とかいるのかな〜。
トランス差別は日常にひそむ
若干の不快さは残ったものの、まぁ、日常生活ってこんなもんだろうと、なんとか自分の気持ちを落ち着けて帰ろうとした時です。
「LGBTのT(トランスジェンダー)ってどうなんですかね。特にスポーツの面とか。そればかりは元男性が女性の競技に出場するのは不公平では?」
と言うわけです。
これはトランス女性の選手に対する差別で、よく聞く意見です。
あまり知られていないと思うのですが、まず国際オリンピック委員会はトランスジェンダー選手の参加条件 を定めています。
出場まで最低1年間はテストステロンのレベルを10nmol/l以下に維持しなければいけないことなどが書かれています。
他にも様々な規定がありますが、ルールを守ったトランス選手が出場するわけなので、不公平だと投げかけるのは筋違いなのです。
また、身体が小さな男性も大きな女性もいるのに、トランス女性だけを批判するのもおかしな話ですよね。
「男の子は速くて強い/女の子は遅くて弱い」という単純なものでもないはず。
仮に体の性別だけを重視するにしても、実際、わたしは兄より運動神経がよく足も速かったですよ。
人権尊重とスポーツにおける公平性については、杉山文野さんが書かれた記事が非常にわかりやすいです。
持って生まれた身体的特徴や人種の体格差は「ズルい」という批判は出ないけれど、なぜかトランス女性だけ批判の対象にされる。
ぜひ、その現状についても考えていただきたいなと思います▼
また、スポーツ基本法やオリンピック憲章では、「すべての人が差別を受けることなく公平に競技ができること」を掲げています。
「すべての人」にはもちろん、性別や性的指向も含まれるでしょう。
トランスジェンダーという属性によってスポーツ界から排除されるようなことがあってはならないと強く思います。
まとめ
今回のような出来事は、本当によくある会話ですが精神的にドッと疲れました。
異性愛前提の会話。カミングアウトをしても、しなくても、どちらを選んでも、このような会話はいつもモヤモヤしてしまいます。
社会を変えるために声をあげることも当事者として大事かもしれないですが、
マイクロアグレッションについては別記事に書いてあるので、ぜひ読んでみてくださいね。
以上、まどぅー(➠プロフィールはこちら)でした。
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