2023年9月、日本人の女性同性カップルがカナダで難民認定されました。
「日本全体に差別がある」とカナダ政府の難民移民委員会が認めたのです。
カナダに移住したLGBTQ+当事者のひとりとして、このニュースが嬉しい反面、日本の人権状況がいかに酷いか思い知らされます。
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カナダで日本人の女性同性カップルが難民認定された
日本人の同性女性カップルがカナダで難民認定を受けました。
朝日新聞の一部を抜粋すると…
同性カップルの日本人女性が昨秋、カナダで難民認定を受けた。性的指向を隠すことを強いられたりセクハラを受けたりしてきたことなどが、同性愛者や女性であることで受ける差別であり、同性婚を認めず家父長的な価値観が根強い日本ではそれらの差別から逃れられないとして、カナダ政府の移民難民委員会が「日本での迫害に対して(当事者が)十分根拠がある恐怖を抱いている」と認めた。
2024年5月18日朝日新聞「日本人の同性カップル、カナダで難民認定 迫害に根拠ある恐怖」より抜粋
難民と認められたのは50代と30代のカップル。
面接や公聴会などを経て、日本では法整備がなく複合差別から逃れるのは難しいと判断されました。
理由は主に下記2つです。
- 女性や同性愛者であることで迫害されたこと
- 法整備がないので日本全体に複合差別があること
難民認定を受けたおふたりは、日本で受けた差別や日本の法整備の現状などを証明する資料を約200ページ提出したそう。
想像を絶する量です。
記事には2009年には自殺をはかったこともあると書いてあったので、日本で受けた差別は計り知れないほど辛いものだったはず。
長い道のりを経て、おふたりがカナダで安心して暮らせるようになって心から良かったなと思いました。
カナダ政府の決断を嬉しく思うのと同時に、どんな思いを抱えて日本を出たのか。
同じく、カナダに移住したLGBTQ+当事者として、込み上げてくるものがあります。
日本の人権状況は難民の基準に該当するレベル
日本の人権状況は国際基準から見て「難民」に該当するレベル。
「日本に差別なんてあるの?具体的にどんな差別があるの?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、
たくさんの不利益・不平等があります。
同性カップルとして借りられる家が少なかったり、職場から福利厚生を拒否されたり…。
日常的に受けるマイクロアグレッションだけでなく、
同性同士のカップルは、さまざまな社会保障を受けることができていないのが日本の現状です。
朝日新聞によると、難民決定通知書には「日本には家父長制が強く残っている」ことや、
「女性や性的マイノリティの人権が十分に守られていない」こともしっかりと記されていたそうです。
結婚できない、家を借りられない、外国人同性パートナーの配偶者ビザがおりない、病院で面会ができないなど、異性カップルと同等に制度が受けられないのは構造上の差別(systemic discrimination)といいます。
日本ってジェンダーギャップ指数125位、OECD性的マイノリティに関する法整備35カ国中34位なんですよね。
(OECD Over The Rainbow?The Road to LGBTI inclusionを参考)
人権後進国として常に最低をキープしている状態が続いている日本。
難民認定されたニュースを聞いても、妙に納得してしまう自分がいます…。
カナダはLGBTQ+の法整備1位の国
カナダは、自国で迫害されているLGBTQ+当事者を難民として受け入れる国です。
性的指向に基づく差別を理由に「LGBTQ+難民」を受け入れ始めたのは1991年から。
カナダで初めて「LGBTQ+難民」を受け入れたのは、もう30年以上も前なんですね。
OECDによると、LGBTQ+に関する法的整備が整っている国ランキングでもカナダは1位です。
以前 私は、カナダに移住したLGBTQ+当事者としてCBC(カナダ放送協会)からインタビューをされたことがあったんですが、
多様性とはかけ離れた日本の現状をカナダで全国放送してくださいました。
カナダから見ると、日本はまさに「人権後進国」という言葉がしっくりきてしまいます。
「日本から出て行け」と心ないコメントがあふれる
日本人の同性女性カップルがカナダで難民認定を受けたニュースのコメント欄には、
「もう日本に戻ってくるな」と批判的な意見も目立ちました。
日本でも家族になれる選択肢があれば、日本で暮らせたわけで…。
日常生活でも、制度上でも、もし差別がなかったら本当は必要のない決断だったでしょう。
心ないコメントに胸が痛みます。
日本で暮らす選択肢がない同性カップルもいる
私自身は、2016年にカナダ人同性パートナーと結婚し、カナダに移住をしました。
私の場合はパートナーがカナダ人だっため、難民としてではなく、配偶者として永住権を申請することができました。
国際結婚をした異性カップルと同じ申請条件とプロセスになりますね。
私がカナダ移住に至った理由は、日本では外国人同性パートナーにはビザがおりないからです。
法律婚した外国籍同性カップル(例えばカナダ人とカナダ人など)の場合は、パートナーに「特定活動」の在留資格が出ることもあります。
しかし、私は日本人なので該当しませんでした。
パートナーにビザがおりなければ、私たちのような「外国人と日本人の同性カップル」は日本で安心して一緒に暮らすことはできません。
日本で暮らす「外国人と日本人の同性カップル」もいますが、外国人同性パートナーの方は観光ビザか就労ビザで滞在しています。そのため、例えば会社が倒産したり、病気や何らかの事情で働けなくなってしまったら日本を出国せざるをえず、とても不安定な状況に追いやられています。
「日本国籍を捨てれば日本で住めるようになる」と、日本政府に言われた方もいるんですよ。
日本人である私が日本国籍を捨てて外国人になれば日本に住めるなんて、本当におかしい…。
異性カップルには選択肢があるけど、同性カップルには選択肢がない。
これが制度上の差別(systemic discrimination)です。
日本に住みたかったけど、移住せざるを得なかった。
結婚の自由をすべての人に訴訟と並行して、外国人同性パートナーの在留資格を求めた裁判もあり、現在も継続中です。
ぜひ応援していただけたら嬉しいです。
詳しくは下記リンクからお読みいただけます。
日本政府は一刻も早く「結婚の平等」を実現する法整備をすべき
「同性婚ができるカナダに移住できたなら解決」などと思われがちですが、
日本で差別が今でもあることや、日本で暮らす選択肢が最初からないことを考えると、「解決」とは程遠いんですよね。
例えば、日本にいる親の介護が必要になった時に日本で暮らす選択肢が私たち当時者にはありません。
日本に一時帰国した時に家族として扱ってもらえない不安もあります。
新しく生活基盤を異国の地で作りあげていくには労力もお金もかかるし…。
英語力や仕事の有無にも左右されるでしょう。
「やっぱり日本に帰りたい」と思った時に、日本でも家族として住めるように、結婚ができる国であってほしい。
現在、日本で行なわれている「結婚の自由をすべての人に訴訟」では法の下の平等に反することなどが争点として挙げられており、
6つ中5つの裁判所で違憲状態または違憲判決が下されています。
未来に希望を感じられる判決が出ているんです!!
2024年の札幌高裁では、以下の3つの憲法に違反していると言い渡されています。
- 「法の下の平等」を定めた憲法14条1項
- 「婚姻の自由」を定めた24条1項
- 「家族制度と個人の尊厳」を定めた24条2項3項
違憲判決がすでに各地域でいくつも出ているのだから早急に日本政府は法整備をするべきです。
日本の同性婚訴訟については、下記リンクにまとめているので、ぜひご一読ください。
カナダへLGBTQ+当事者として難民申請するには?
カナダで難民認定された日本人の女性同性カップルの方は、
性的マイノリティの難民申請を支援するNPO団体「Rainbow Refugee」に支援を求め、申請手続きを行なったそうです。
過去には日本国籍トランスジェンダーの女性もカナダで難民認定されています。
理由は主に下記3つです。
- 日本の性別変更における要求は差別である
- 職場や医療機関へのアクセスで直面する問題は深刻である
- 国家の法に基づく保護が不十分である
複合差別があると判断された場合は、カナダ移住が現実的に可能ということ。
私はカナダに移住して10年が経ちました。
今では日常生活でレインボーフラッグを見かけない日はないほどです!!
下記写真は、薬局のドアに貼ってあったレインボーステッカーです。
プライド月間やトランスジェンダー可視化の日には、トルドー首相が「あなたの命が大事だ」と毎年発信してくれています。
国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日には、公立の小学校でレインボー週間がありましたよ。
カナダは本当に暮らしやすいと心から思っています。
カナダ移住をしたいけど英語が不安…というクィアの方もいるかもしれません。
英語教師歴約20年のカナダ人パートナーのキムがオンラインで英語を教えています。
英語が不安な方はレッスン生を募集していますので、お気軽にInstagramよりDM(@madu_cation)くださいね。
まとめ
この記事では、日本人の女性同性カップルがカナダで難民認定されたことについて書きました。
人権を守ってくれるカナダを誇りに思うし、おふたりが今後の人生を安心して暮らせるようになり、本当に良かったなと思っています。
日本でも早く法制度が整うことを切に願いつつ、カナダに移住する決断をした方を全力で応援しています。
カナダのプライドパレードを一緒に歩きましょう〜!!
以上、カナダ在住のまどぅー(➠プロフィールはこちら)でした。
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