トーンポリシングとはどんな意味なのでしょうか?
トーンポリシングについて、わかりやすく具体的な事例を交えて説明します。
この記事でわかること▼
- トーンポリシングとは?
- トーンポリシングの具体的な事例
- トーンポリシングの特徴と問題点
- トーンポリシングの対策
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トーンポリシングとは?
トーンポリシングとは、相手の口調を非難し、話の論点をずらす行為のことです。
「言いたいことはわかるけど、普通の声で言えばいい」とか「押し付けがましくなく主張してほしい」とか、
「怒るんじゃなく伝え方を変えてみなよ」とか「差別は反対だけど、平和的な方法で行ないましょう」とか、
いっけんすると、理解あるように見せかけながら話の論点をずらしてくる行為がトーンポリシングなのです。
思っている以上に悪質な言動…・。
正当な抗議に対して居心地が悪い人が使う手段です。
マイクロアグレッション同様に相手の傷を過小評価する癖もあるんですよ…。
トーンポリシングの具体的な事例は後術しています。
トーンポリシングの意味・英語の語源
トーンポリシングの直訳的な意味は以下です。
- トーン (tone)=話し方
- ポリシング (policing)=取り締まり
つまり、トーンポリシングは「話し方を取り締まること」が語源になっているんですね。
トーンポリシングの特徴
トーンポリシングの最大の特徴は、対等な関係では起こりにくい点です。
日常でトーンポリシングを受けることもありますが、
性別やセクシュアリティ、また人種的、民族的マイノリティの人たちが、マジョリティから受けるトーンポリシングが特に問題視されています。
マイノリティは少数派、マジョリティは大多数という意味です。
例えば、以下のような関係の中で起こることが非常に多いんです。
- 弱者<強者
- 当事者<非当事者
- トランスジェンダー<シスジェンダー
- 被害者<加害者
- 女性<男性
- 黒人<白人
- 部下<上司
- 生徒<先生
- 障がい者<健常者
- 少数派<多数派
- 子ども<保護者
トーンポリシングをする側は非当事者であったり、権力がある地位を持っていたり、特権を持っている側だということがよくわかりますね。
意見を述べる時に、もしも自分が特権を持つマジョリティ側だとしたら、トーンポリシングをしないように注意が必要なんです。
なぜなら、差別をしたり特権を持つ側は、自分が差別をしているとは認めたくないので、無意識にトーンポリシングをしがちだからです。
モラハラやパワハラとも構造は似ていますね。
家族の中で、夫が大黒柱のような存在の場合、夫からトーンポリシングを受けることもあります。
このように、上下関係やパワーバランスがとれていない関係性の中で言われることが多いのも特徴。
差別や抑圧を受けている側の気持ちにに寄り添うことの方が必要なのに。
トーンポリシングは、当事者同士の中で起こることもある
対等な関係では起こりにくいのがトーンポリシングですが、
実は当事者同士の中でトーンポリシングが起こる可能性も十分にあります。
当事者が当事者をトーンポリシングするのは、本当に悲しいことです…。
悲しみに寄り添うことはあっても、怒りに寄り添うのはむずかしいものです。
トーンポリシングの類語
トーンポリシングの類語には、tone argument(トーンアギュメント)と呼ばれるものがあります。
argument(アギュメント)は議論という意味。
トーンポリシングと同じ意味ですが、日本ではあまり使われていないですね。
トーンポリシングの事例
トーンポリシングの具体事例をいくつかあげてみますね。
トーンポリシング具体事例①いじめ被害
では早速、1つめのトーンポリシングの事例を紹介します。
生徒が先生にいじめ被害を報告した時の具体的な会話例です。
あの野郎に顔を殴られた!!先生なんとかして!!
冷静になって。そういう言葉使いをすると、誰も聞いてくれないよ。
このように、相手が要求している内容は完全に無視して、「相手の話し方」について言及してくるのがトーンポリシングです。
トーンポリシング具体例②LGBTQ+差別
2つめのトーンポリシングの事例を紹介します。
LGBTQ当事者が受ける具体的な会話例です。
LGBTQ+への不当な扱いについて声をあげていきたい!
あんまり声をあげると、厄介な人たちだと思われるよ。怒らずに言ったほうがいいんじゃない?
「声をあげる」という行為そのものを批判するトーンポリシングです。
最近は、問題提起している部分には触れず、「肩身の狭い思いをするから黙ってて」と、
LGBTQ+当事者からLGBTQ+当事者へのトーンポリシングも増えました。
トーンポリシング具体例③人権差別
3つめのトーンポリシングの事例を紹介します。
米国では2020年、ジョージ・フロイドさんの死に抗議する大規模デモが行われました。
白人警察官が、逮捕中の黒人男性の首を執拗に踏みつけ窒息死さた事件。
この大規模デモは、人種差別に苦しめられている黒人の怒りの表明ですが、
このデモの最中に多くのトーンポリシングを見かけました。
人種差別は絶対に反対!デモに参加して抗議する!
過激なやり方では誰も聞いてくれないよ?
怒りの抗議デモが起こる前は誰も話題にしなかったし無関心だったのに、
抗議デモが始まった途端に「怒るな、冷静になれ!」と諭したり、
「主張はわかるけどやり方が間違っている」と伝えたり、
「差別はいけないことだと思うけど、言い方を考えないとね」など言ったり。
論点をずらしてくるのがトーンポリシングです。
大規模デモでの相次ぐ暴動や窃盗自体を批判したくなりますが、
その批判がトーンポリシングになる可能性も大いにあります。
普通の声で主張しても届かなかったからこその暴動という形になってしまったのだから…。
まずは、これまでの根深い人種差別問題を知ることが大事なのです。
また、人種差別のトーンポリシング例は他にもあります。
2020年にはテニスの大坂選手が「人種差別に抗議する」として試合棄権を発表しました。
その時に「ボイコットは良くない」とか「試合を棄権するのは意味がない」とか、
「他の方法があったのでは?」などと反対する声があがったのです。
大坂なおみ選手は結果的に棄権撤回し、出場を決めましたが、批判の声はまさにトーンポリシングの典型例でした。
トーンポリシング具体例④性差別
4つめのトーンポリシングの事例を紹介します。
性差別に関するトーンポリシングもあります。
女性差別に関する具体的な会話例はこちらです。
それは女性差別です!!
性別に分けること自体がおかしいよ。男性でも苦労している人はいるんだから。
女性差別に関して話しているのに、「男性も同じ経験をしているんだ」ということを持ち出してくるトーンポリシングです。
社会的構造から、まだまだ男女平等とは言えない状況であるのにも関わらず…。
男性側は、自分の持つ特権を理解する必要があるでしょう。
女性の権利を主張するフェミニストからの発言に、「女性は怒りっぽくて感情的」と根拠のない言説からトーンポリシングをする方も多いです。
トーンポリシング具体例⑤ジャニーズ記者会見
5つめのトーンポリシングの事例を紹介します。
2023年にジャニーズの記者会見で実際に起こったトーンポリシングです。
一部の記者が感情的になってしまった際に、井ノ原快彦氏が以下のような発言をしました。
ルールを守っていく大人たちの姿を見せたいです。会見を見ている子どもたちのためにも、どうか落ち着いてください。
個人的な意見ですが、井ノ原氏の発言後に拍手が起こったのが明らかに違和感であり、会見の闇だと感じましたよ…。
重大な児童性虐待事件の加害者側であるほうが、追求者や被害者に対して誠実な対応だったとは到底言えませんよね…。
仮に論点をずらす意図がなかったとしても、真の問題解決に歯止めがかかる発言は、やはりトーンポリシングだったと言えます。
トーンポリシングの対策・対処法
トーンポリシングの対策や対処法はあるのでしょうか?
トーンポリシングを行なっている側は、話し方や態度のせいにして、話を真剣に聞こうとしないですよね。
「主張は分かるけど」と前置きし、論点をずらしてくるのが上手だからです。
自分がトーンポリシングをする側にならない対策として、自分の社会的特権を理解しておく必要があるでしょう。
自分の特権を理解し、なぜ相手が怒った口調でその出来事を訴えているのか、心から理解することが大事です。
また、マイクロアグレッションについて学ぶこともおすすめです。
詳しくは別記事に書いたので、ぜひ読んでみてくださいね。
トーンポリシングまとめ
トーンポリシングは、相手を抑圧する時に都合よく使われるので覚えておきたい言葉でしたね。
「女性や当事者、少数派が怒ること」を認めない社会を作るのではなく、
なぜその問題が起きているのかに着目し、トーンポリシングの発信者にならないようにしたいものです。
以上、まどぅー(➠プロフィールはこちら)でした。
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