
アウティングという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
アウティングとは、LGBTQ当事者の承諾を得ずに、その人の性的指向・性自認(SOGI)を第三者に話してしまうことを言います。
この記事では「アウティングとは?」について、わかりやすい事例を交えながらさらに解説していきます。
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アウティングとは?
アウティングとは、LGBTQ当事者の承諾を得ずに、その人の性的指向・性自認を第三者に話してしまうことを言います。
単刀直入な意味としては「暴露」が一番近いです。
例えば、「あの人、ゲイなんだって」などとLGBTQ当事者の許可なく他人に話すことです。
(そのほかの詳しい例は後述しています)

アウティングの意味・概念
アウティングは悪意の有無に関わらず、人格権・プライバシー権を著しく侵害する行為です。
ホモフォビアから意図的にSOGIを暴露されることもあれば、何気ない会話の中で暴露されてしまうこともあります。
アウティングの語源・由来
アウティングは英語で「Outing」と表記されます。
1990年1月29日に米国の作家ウィリアム・A・ヘンリー3世が、
「ゲイをクローゼットから追い出す」という記事で「アウティング」という言葉を使いました。
このことがキッカケになり、「アウティング」という言葉が社会に浸透したと言われています。
アウティングの歴史
実はアウティングは1900年の初期から問題視されているんです。
いちばん最初のアウティングは「ハルデン・オイレンブルク事件」と言われていますね。
ハルデンがオイレンブルクを同性愛者だとアウティングし、名誉毀損裁判に発展しています。
当時のドイツではLGBTQ当事者がアウティングされ、辞職や自殺に追い込まれている深刻な事態が続いていました。
この事件はとても複雑なのですが、裁判は1907年から1909年まで続いたそうです。

アウティングとカミングアウトの違い
アウティングとカミングアウトは混同されがちですが、全く意味が違います。
簡単に説明するとこんな感じ▼
- 自分の性的指向や性自認を自分で第三者に打ち明けることを「カミングアウト」
- 自分の性的指向や性自認を勝手に第三者に暴露されることを「アウティング」

「カミングアウトとは?」という記事は別に書いています。
カミングアウトされたらどうする?
もしも友人や家族からカミングアウトを受けたら、どう対応すればいいのか?という質問をいただくことがあります。
こちらについては別記事に書きました▼
アウティングのわかりやすい事例

<下に続く>
性的指向を第三者に暴露される例






性自認を第三者に暴露される例


このようにLGBTQ+当事者であることを、本人の承諾なしに第三者に言いふらすことがアウティングです。
他にもあるアウティング例まとめ
他にもアウティングの例はあるので紹介しておきます。
本名でカミングアウトをしていないのにも関わらずネット上に本名をこぼされたり、
写真を公表していないのに勝手に使われたりすることもアウティングとなります。
例えば飲み会で「彼女は?ゲイなの?」としつこく聞かれ、仕方なく「そうです」と言ったら
次の日には他の人に言いふらされていたというようなこともアウティングに該当します。
オープンにしている人もいれば、していない人もいる。

一橋大学アウティング事件(実際の例)
2015年に一橋大学の学生さんが、同級生にゲイであることを暴露され自殺する事件が起きました。
一橋大学アウティング事件と呼ばれています。
LINEグループ内で「おれもうおまえがゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん」と複数の人に送信されたのです。
自殺の原因は本人の同意なくアウティングされたことでした。
アウティングの加害は当事者を自殺に追い込むほどの威力を持っているんですよ…。
アウティングの問題点とは?
では、なぜアウティングをしてはいけないのでしょうか。
アウティングの問題点を箇条書きにしてみました。
- 人格権・プライバシー権の侵害である
- 差別の助長・ハラスメントに繋がる可能性がある
- 精神的苦痛を強いられ、時に命の危険に晒される
①人格権・プライバシー権の侵害である
これら2つの権利を明らかに侵害するのがアウティングです。
一橋大学アウティング事件の一審判決では「人格権・プライバシー権などを著しく侵害し許されない行為である」と明言されました。
関連記事:ゲイだと暴露「許されない行為なのは明らか」 一橋大学アウティング事件、遺族の控訴は棄却
②差別の助長・ハラスメントにも繋がる
アウティングは差別やイジメ、SOGIハラスメントの助長に繋がっています。
実例として、同僚に性別変更したことを勝手に公表され、差別的な言動を受けた人もいるんです。
長年勤務した職場でアウティングされて退職せざるを得なかった人もいます。
差別や偏見が全くないとは言い切れない社会で、
自分の性的指向・性自認(SOGI)を暴露されてしまうのはリスクがあるんです。
LGBTQ+に関して理解があるかもわからない第三者に話されるわけですから…。

③精神的苦痛を強いられる
アウティングをする側はちょっとしたウワサ話という認識、または軽い気持ちかもしれませんが、
アウティングをされた側にとっては精神的苦痛を強いられるのです。

自分の口から伝えていないので、面白おかしく伝わってしまう可能性もあります。
世界には同性愛を違法としている国、罰則や死刑がある国もあります。
命にかかわる危険な行為であることから、アウティングはいかなる理由があっても絶対にしてはいけないのです。
アウティングは違法?法律はどうなっている?
現段階ではアウティングを規制する法律自体は存在しません。
ですが、人格権およびやプライバシー権の侵害行為にあたる違法な加害行為として認識されています。
刑事上の名誉毀損罪・侮辱罪や民事上の不法行為として罪に問われることがあります。
アウティング禁止条例とは?
アウティング禁止条例とは、文字通りアウティングを禁止するための条例です。
2018年1月30日に東京都国立市で「アウティング禁止条例」が施行されました!!
また、2020年6月3日に三重県はアウティングを含むLGBT差別禁止条例を制定しました。

パワハラ防止法とは?
2020年6月から大企業は「パワハラ防止法」が施行されました。中小企業は2022年4月からの施行だそうです。
このパワハラ防止法には「SOGIハラ」や「アウティング」もきっちりと含まれています。
アウティングをしないためにはどうする?
アウティングをしないための対策をまとめました。
①本人に確認をとる
アウティングしないためにどうすればいいのか?
答えはとてもシンプルです。

親友にはカミングアウトしているけど職場にはカミングアウトしていないとか、
友達や職場にはカミングアウトしているけど家族にはカミングアウトしていないとか、
当事者は誰にカミングアウトするか選んで話している場合も多いので気をつけなければなりません。
相手からカミングアウトを受けた場合、相手がどこまでカミングアウトしているか聞いておきましょう。
②SOGIハラスメントとは何か?知っておく
また、同時にSOGIハラスメントについて知っておくことが大事です。
詳しくは別記事にて▼
③企業でアウティング防止対策を設ける
企業でアウティング防止対策を設けることで、アウティングの概念を社内で広めることができます。
対策をきちんと示すことで、アウティング被害にあってしまうリスクを減らせますよね。
アウティングされたらどう対処する?
では、もしもアウティングされてしまった場合はどうすればいいのでしょうか。
LGBTQ+を支援している公共機関に相談する
一般相談員が勉強不足・認識不足ということも考え、
LGBTQ+に関する活動や支援を行っている団体に相談するのがベストだと個人的には思います!!
弁護士に相談する
アウティングを実際に裁判で取りあげている弁護士に相談してみるのもいいですね。
LGBTQ+関連の相談場所は?
全国のLGBT+当事者や、その周りの方が利用できる電話相談一覧表は、下記から確認&ダウンロードできます。
アウティングまとめ
アウティングした側は当事者に深い傷を負わせてしまう。
アウティングは「当事者を追い詰める危険な行為」という認識が広まることを心より願っています。
もうこれ以上、アウティングによって尊い命がなくなりませんように。
他にも覚えておきたい「マイクロアグレッション」という言葉があります。
別記事からお読みいただけます▼
以上、まどぅー(➠プロフィールはこちら)でした。
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