シンガポールに住むセクマイ当事者に、実際に現地の状況を聞く機会がありました。
この記事ではシンガポールのLGBTQ+・同性婚事情をまとめています。
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シンガポールのLGBTQ+・同性婚事情について
まず、シンガポールのLGBTQ+・同性婚事情について箇条書きにまとめてみました。
- 法的に同性婚を認めていない
- 男性間の性行為は違法
- 刑法377A条により最長2年の禁固刑
- 女性間の性行為は犯罪とされていない
- パートナーシップ制度なし
- 手術を経た人のみ身分証明証などの性別変更が可能
- 学校で同性愛が違法であると教えられる
- 同性愛を肯定するテレビや映画の放映は検閲される
- 外国企業はLGBTQ+イベントの支援禁止
シンガポールでは法的に同性婚を認めていないだけでなく、男性同士の性行為には2年以下の禁錮刑が科せられるんですね。
刑法377A条がシンガポールに導入されたのは1938年のこと。
イギリスの植民地時代に制定されました。
これまでに刑法377A条の廃止を求める署名が行なわれたこともありましたが、
改変されることなく現在に至ります。
シンガポールの首相の甥っ子がゲイである
シンガポールでは、リー・フアンウー(Li Huanwu)さんが男性と結婚したことがニュースになりました。
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なぜなら彼は、シンガポールの現在の首相であるリー・シェンロン氏の甥にあたる方なんです。
さらに、リー・フアンウーさんは、シンガポールの建国の父のリー・クワン・ユー氏の孫でもあります。
リー・フアンウーさんは刑罰があるシンガポールを出て、同性婚の法制化がされている南アフリカで結婚されたんですね。
2021年の現在も、刑法377A条が撤廃されていませんが、このニュースはシンガポール全土で話題になりました。
シンガポールでLGBTQ+への差別や罰則について
シンガポールに住むセクマイ当事者である友人に、現地のLGBTQ+への差別や罰則について聞いてみました。
トランス差別反対を訴えた5人の学生が「逮捕」された
2021年1月26日の午後、教育省本部前で、学生5人がデモを起こしました。
Today: A protest by Singaporeans against transphobia in the education system. pic.twitter.com/ZRy14e9nHZ
— Kirsten Han 韩俐颖 (@kixes) January 26, 2021
デモに至った理由は、学校の先生からトランスジェンダーの学生がホルモン療法を受けることを禁じると言われたためです。
デモを起こした5人の学生は、学校からの「LGBTQ+学生に対する差別をやめてほしい」と勇気を出して立ち上がったんです。
LGBTQ+の生徒に対する差別や嫌がらせは私たちの学校で長年の問題であることを訴えていました。
デモを起こしてものの数分で、警察が駆けつけ、学生3人が逮捕されました。
The three protesters have been arrested. pic.twitter.com/5lQ73WlbTX
— Kirsten Han 韩俐颖 (@kixes) January 26, 2021
どんな理由であろうと、正当な抗議であろうと、シンガポールではデモを起こしたら即逮捕です。
本当にやるせないですね。
関連記事:S’pore police arrest 3 people for protest against transphobia outside MOE building
LGBTQ+に関する放映は検閲されるor罰金
LGBTQ+を肯定するテレビ番組は、シンガポールでは必ず検閲されます。
例えば、養子を迎えた同性カップルが出演するリアリティ番組が放映された際も、
放映局に15,000シンガポール・ドルの罰金が命じられました。
また、2008年にも、ふたりの女性がキスをするコマーシャルを流したテレビ業者が、
10,000シンガポール・ドルの罰金を課せられました。
2009年の米国アカデミー賞授賞式の際にも、ゲイやレズビアンに対する差別について述べたショーン・ペンのスピーチは丸ごと削除されて放映されました。
シンガポールのトイレ事情
シンガポールのトイレは、障害者用のトイレや多目的トイレであってもほとんど男女に分けられていると聞きました。
ムスリム宗教の影響だそう。
いない存在にされる・特に男性同士のカップルはあまり見かけない
オープンに親密にしている男性同士のカップルはあまり見かけないんだとか。
オープンにしてる方のほとんどは女性同士のレズビアンカップルだそう。
男性間の性交渉が違法になる刑法377A条の影響により、いない存在にされているわけです。
<下に続く>
シンガポールのLGBTQ+への取り組みは?
シンガポールのLGBTQ+への取り組みについてお話を伺ってみました。
刑法撤廃を求める訴訟があったが2度も棄却された
現在、世界では70カ国あまりの国が同性愛を犯罪としている法律を制定しています。
実はシンガポールでは2014年と2020年に刑法377A条を撤回すべきと訴えがあったんですが、
いずれも裁判所に棄却されたんですよ。
2018年にインドでも裁判が行なわれんですが、同性同士の性行為は犯罪ではないと判決されました。
このインドの判決に期待が高まりましたが、2度めであった2020年の裁判もあっけなく棄却。
本当に残念でなりません。
関連記事:Singapore gay sex ban: Court rejects appeals to overturn law
LGBTQ+のカウンセリングを行っている団体「ウガチャカ」
国や学校から全くサポートがない状況ですが、Oogachaga(ウガチャカ)というLGBTQ+をサポートする非営利コミュニティがあります。
LGBTQ+当事者のカウンセリングを対面やメールで行なっています。
1999年に設立され、今でも安心して当事者が集えるコミュニティとして存在しているそうです!
「ピンクドット」というイベントが毎年ある
2009年からピンクドット(PINK DOT)というイベントが発足しました。
LGBTQ+の権利や差別解消に向けた法制化を訴えていくために、立ち上がった方たちがいるんですね。
2009年には1000人ほどの参加者だったそうですが、2019年の参加者は2万人ほどに増えたそうです!!
ピンク・ドットの様子▼
しかし、公道でのプライドパレードは行なわれません。
また、このピンクドットに参加できるのは現地のシンガポール人のみ。
外国人の参加は禁止、外資系企業は賛同してはいけないなど様々な制限があります。
シンガポールに住むセクマイ当事者からのメッセージ
わたし自身、シンガポールに2度訪れたことがあります。
治安が良く、街も清潔で、ビジネスでの成功者が多い印象でした。
いっぽうで、これほどの先進国でありながら、
報道の自由がなく、集会に制限があり、学生が逮捕される現状を知り、悲しい気持ちになりました。
このブログではこうした世界の現状も伝えていけたらいいなと思い、発信しています。
さいごにお話をしてくれた友人の言葉で締めくくります。
シンガポールに住むセクマイ当事者として日々思うことは、いつ法を盾に差別的扱いを受けるかわからない恐怖があります。
とにかく刑法がなくなってくれたらいい。
この法律があること自体が人権侵害だと感じます。
シンガポールはとても住みやすく、優しい人で溢れる素敵な国です。
東南アジア一の経済大国の座を確立した今、国際社会でますます存在感を発揮していくために
これまでのやり方を変え人権も大切にする国になってほしいです。
お話を聞かせてくれてありがとう。
以上、まどぅー(➠プロフィールはこちら)でした。