わたしは現在、寮生の世話をするハウスペアレンツとしてピアソンカレッジと呼ばれる国際学校に住んでいます。
不登校だった小学生時代、ブラック校則によって精神的苦痛を与えられた中学生時代、進学校を中退した高校生時代。
もしあの時のわたしがこんな多様溢れる学校を知っていたら。
そう考えずにはいられません。
この記事は世界100ヶ国以上の生徒が共に学ぶ国際学校ピアソンカレッジのご紹介です。
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ピアソンカレッジとは?
ピアソンカレッジは元カナダ首相の「レスター・B・ピアソン」によって設立されました。
ユナイテッド・ワールド・カレッジ(United World Colleges・UWC)の分校の一つです。
ピアソンカレッジは、ピアソン氏の理念「子どもたちは人種、性別、貧富、国籍に関わらず平等に学問に取り組むべき。」というものが影響されています。
元カナダ首相レスター・B・ピアソン
ピアソン氏は1957年にノーベル平和賞を受賞しているんですよ。
この時に、彼は受賞講演会でこのように問いかけました。
How can there be peace without people understanding each other,
and how can this be if they don’t know each other?
お互いを理解せず、お互いを知らず、どうやって平和を築くことができるのでしょう?
参考: ピアソンウェブサイト|UWC日本協会サイト
日本では給食の完食指導が行われていたり、生徒に黒髮を強要したり、数多くのブラック校則が未だに存在し、
「みんなと同じでいなければならない」ことを強制させられていますよね。
わたし自身、本当にツラい思いをしました。(別記事にて)
果たして、育った環境や文化など何もかもが異なる生徒が共に学ぶ全寮制の「ピアソンカレッジ」ではどんな教育が行われているのか気になりませんか?
ピアソンカレッジの場所
ピアソンカレッジはカナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー島の南端に位置します。
ちなみに島の名前はビクトリア島ではなく、「バンクーバー島」です。
カナダ、ビクトリアの空港またはビクトリアのフェリー乗り場(Swartz Bay)から約1時間のマチョーズン村にあります。
カレッジはクラスルーム、食堂、5つの生徒寮、先生たちが住んでいる家などの山小屋風の建物が森の中に点在しています。
自然が囲まれているのが魅力
森と海に囲まれたキャンパスは息をのむほど美しく、
カヌーでカフェに行けちゃったり、
大自然に囲まれて、生き生きとした動物と多様な人々が共存している場所なんです。
ピアソンカレッジの施設紹介は別記事に書きました▼
生徒の国籍は5大陸80ヶ国以上にわたる超ダイバーシティー
ピアソンカレッジは174人の83ヶ国出身の生徒が在籍しています。(2017-18年現在)
アメリカやイギリスといった聞いたことある国から、またはブータンやブルキナファソ、モーリシャスなどあまり馴染みのない国からきている子もいます。
カレッジ内に存在する言語は100以上もあり、中には5ヶ国語話せる子もいました。
ちなみに年齢は日本でいう高校2〜3年生の歳です。
カレッジ内でアンケートを行なった
カレッジで2017年にアンケートを行ないました。
LGBT+当事者の割合は22%だということがわかりました。つまりカレッジ内に「5人に1人はいる」という計算になりますね。
紛争の地域で育った生徒は18%、なんらかの宗教を持った生徒は38%いました。
残念ながら、今まで人種差別を人生で受けたことがある生徒は44%もいることがわかりました。(2017年度調査)
自分とは異なる人に出会うことで、今まで自分の中に存在していた「当たり前」や「普通」というものが本当は存在しないことを学んでいけるのです。
<下に続く>
授業はディスカッションや体験型がメイン!
まずは下記の写真を見てください。
これ、英語の授業なんですよー!美術じゃないんです。
このクラスでは先住民の差別が書かれた漫画を元に勉強していました。その漫画の中に出てくる「マスク」を実際に自分たちで作っています。
様々な国籍を持つ生徒がクラスメートにワセリンを塗ってあげている、立派な授業です。
他にもピアソンならではの授業といえばマリンサイエンス(海洋学)ですね。
授業では海にいる生物を自分の目で見てるために、船に乗って大海原を浮遊したり、川のサーモンを見に行ったりします。
現役生徒にインタビュー
現役生徒に授業内容について聞いてみました。
受験のための勉強じゃなくて、人生に役立てられることを学んでいる。発言する機会が多いから常に考えさせられるし。先生だけじゃなく自分たちが授業を作っている、そういう感覚です。
生徒が心から学んでいると実感している場所。
旅をしなくても世界中の友達ができることもかなり魅力ですねー。
90%以上の在校生が奨学金をもらっている
「海外留学ってお金高そう・・・」って思うかもしれないですが、
90%以上の在校生が奨学金をもらって来ています。
これは、冒頭でも述べた通り、貧富や家庭の収入に関わらず学問に取り組めるように奨学金制度があるからです。
だから、本気で「ピアソンで学びたい」って思った人だけが在籍しているんですよ。
文化祭ってあるの?
Regional Day (リィジョナルデー) と呼ばれるものがあります。
6つのエリアに区分し、1年に3回、各エリアの生徒たちが自分たちの文化を紹介できちゃうんです。
先日あったアジアパシフィックデー(Asia Pacific Day)では在籍している日本や中国出身の生徒たちが漢字で名前を書いてあげたり、折り紙や俳句のワークショップなどを企画していました!
夜はステージでショーがあります。これが一番の見所。
この日のために練習を重ねて、母国のダンスを踊ったり、ポエムを披露したり。様々な国から来た生徒が試行錯誤して一緒に作り上げる大きなイベントとなっています。
この日を境により一層生徒たちの距離が縮まっていくのも嬉しい。
ダンスの発表会
ダンスの発表会もあります。
以下のリンクはわたしがピアソンカレッジの生徒と踊った時の映像です▼
ピアソンカレッジの校則
カレッジ内には「セーフゾーン(SAFE ZONE)」というポスターが至るところに貼ってあります。
この場所は、人種、民族、性別、ジェンダー、貧富、年齢、宗教、能力に関わらず全ての人を尊重する安全な場所です。
服装はもちろん自由で、宗教上ヒジャブやターバンを身につけている子もいるし、耳や鼻にピアスをあけている子も、髪を染めている子も、タトゥーをしている子もいます。
でも、それを理由に先生から怒鳴られたり、強要されることはありません。
ただし、規則が全くないわけではありません。「お酒を飲まない、ハラスメントをしない、火を使わない」など学校内に規則は存在します。
現役の先生、卒業生からコメント
自分の文化や社会、時代によって影響されて今の私がいます。
だから本当の自分自身を見つけるために、外から学ぶ必要があるんです。
教師としてピアソンカレッジに赴任する前は、世界40ヶ国をまわりました。旅では新しいことを学べたけれど、自分が旅を続けることは難しい。
ここでは常に新しいことを「世界から来ている生徒から」学べます。そして自分自身のことを学べるんです、生徒を通して。
生徒たちは日々「本当の自分を見つけている」という体験をしているように思います。
自然に囲まれているのもピアソンの魅力の一つですね。
シリア問題など日々ニュースで見ることが、世界から遠いことではなく、身に起こっていることだと思えるようになりました。
世界中から集まる生徒と過ごせたことで、「スタンダード」がないことに気づいたし、将来の日本を、グローバル社会を牽引する存在にするには、多くの変革が必要だと感じています。
日本の高校ではどうしても受験のための通過点のように錯覚してしまうことも否めないけど、ピアソンでは限りある時間しか友達と一緒に過ごせないので、今過ごしている時間を大切にすることを学びました。
文化も言語も違うのに、本当に世界の人と友達になれるの?
卒業式の日に生徒のひとりがこんなことを書き残していました。
It’s so hard to say “good bye” but we need to say “good bye” to say “hello” again
さよならを言うのは辛いけど、「さよなら」って言わなきゃいけない。また「こんにちは」って言うために。
本当にその通りだなーって。
心の底から「こんな貴重な時を過ごせてよかった」って思う時は人生でなかなか訪れないんですよね。
ここで過ごす彼らは間違いなく、友達や親友を作ります。でも彼らにはそんな言葉は必要ないんですよ。
だって本当に友達だったら「わたしたち友達だよね」なんてわざわざ確認なんてしないですから。それにきっと「ずーっと友達」ってこともあり得ないから。
様々な国からやって来て、カルチャーショックを受けて、慣れない英語や異なる文化で過ごす環境。
時には友達で、時には疎遠になって、時には喧嘩して顔も見たくない存在になって、
もしかしたら卒業したらもう二度と会わない人も中にはいたりして、
でもまた何かのタイミングで涙が出るほどその人のことを好きになったりして、そういうの全部引っ括めて「出会い」なんだと。
このピアソンカレッジという場所で、世界中の人々と出会って別れて、また出会う。それの繰り返し。たったそれだけ。
その「それだけ」がほどよく心地よく続いていくのが、かけがえのない2年、ここでの生活なんだと思っています。
卒業した後のみんなの人生、それはわたしにもわからない。
母国に帰る人もいれば、紛争で母国に帰りたくても帰れない人もいます。大学に進んでいく人も、働く人もいて、それぞれ進んでいきます。
進んでいくみんなの未来にわたしはいません。ハウスペアレントとして、わたしはピアソンに残って、卒業生を見送って、また新しく世界からやってくるみんなを迎えます。
もがいたり迷ったり悩んだりしながらも、ピアソンで過ごした日々はみんなにとって間違いなく、人生の一部になっているんでしょう。
ここに来てくれて、出会ってくれてありがとう。
UWCに進学するなら読むべき本
ピアソンの卒業生「小林りん」さんが2014年に長野県軽井沢にインターナショナルスクールIZAK(アイザック)を設立しました。
りんさんの人生について書かれた本がダイヤモンド社から出版されています。
①茶色のシマウマ、世界を変える
日本の学校では自分が異質であると感じ高校を中退したりんさん。ピアソンカレッジに留学し、気づいたことは「日本人としてのアイデンティティ」だったそう。
日本教育に疑問を抱いていた私と似ている部分も多かったので、すぐに引き込まれていきました。
②もしも世界が100人の村だったら
この本はピアソンカレッジに似ているな〜と感じます。
③茶色の朝
10分ほどで読み終わる薄い本ですが、内容が深く考えさせられます。自分が何をしたいのか迷っている人にはぜひこの一冊を読んで今すぐ行動してほしい。
UWC生にぴったりの本だと個人的に思います。
長くなりましたが、以上です。
ピアソンカレッジで仕事をしているまどぅー(@madocanada)でした。